C故事・諺-3
1.医者の薬も匙加減。
(いしゃのくすりもさじかげん)
何事もほどよいことが大切だというたとえ。 どんなによい薬でも、分量や調合が適切でないと効きめがない意から。
2.百年河清を俟つ。
(ひゃくねんかせいをまつ)
常に濁っている黄河の水の澄むのを百年もかかって待つの意。 いつまで待っていても実現のあてのないことをいう。
3.人を犯す者は乱亡の患いあり。
(ひとをおかすものはらんぼうのわずらいあり)
人を迫害した者は、その応報が自分にも及び、乱れ亡びることになるということ。
4.人は尭舜にあらず、何ぞ事々によく善を尽くさん。
(ひとはぎょうしゅんにあらず、なんぞことごとくによくぜんをつくさん)
中国古代の伝説上の帝王、尭と舜。徳をもって理想的な仁政を行ったことで、後世の帝王の模範とされた。
5.直きを友とし諒を友とし多聞を友とするは益なり。
(なおきをともとしまことをともとしたもんをともとするはえきなり)
正直な人、誠実な人、様々なことに通暁(つうぎょう)している多聞な人を友とするのは有益である。多聞の友とは、博識な友、見聞の広い人、博学で教養も情報も豊かな「物知り」。
6.難に臨んで遽かに兵を鋳る。
(なんにのぞんでにわかにへいをいる)
戦争が起こってから急いで武器を作る。
7.輔車相依る。
(ほしゃあいよる)
互いに助け合って存在するたとえ。 また、密接な関係にあって切り離せないたとえ。
8.児孫の為に美田を買わず。
(じそんのためにびでんをかわず)
子孫のために財産を残すと、それに頼って努力をしないので、財産を残さない。
9.櫂は三年、櫓は三月。
(かいはさんねん、ろはさんがつ)
櫓の使い方に比べて櫂の使い方の難しいことをいう。櫂と櫓のように、似たようなものであっても習得にかかる時間には差があるということ。また、何事にも技術を習得するには時間がかかるということ。
10.水到りて渠成る。
(みずいたりてきょなる)
水が流れてくれば、自然に掘り割りができることをいい、深く学問を究めれば、自然に徳が備わることにたとえる。また、機会さえ到来すれば、自然に物事はできあがることをいう。
11.寵愛昂じて尼になす。
(ちょうあいこうじてあまになす)
親が娘をいとおしむあまり、いつまでも嫁にやらないで、ついには尼にするようになる。かわいがるのも度が過ぎれば本人のためにならないことのたとえ。
12.先鞭を著ける。
(せんべんをつける)
他人に先駆けて物事に当たること。 いち早くそれを行うこと。
13.陰徳あれば陽報あり。
(いんとくあればようほうあり)
人に知られずひそかによいことを行っていると、いずれ、よくわかる形でよい報いを得られる、ということ。
14.大河で手を堰く。
(おおかわをてでせく)
無謀で不可能なことをするたとえ。大きな川を手で堰き止めようとするということから。
C故事・諺-2
1.箸にも棒にも掛からぬ。
(はしにもぼうにもかからぬ)
ひどすぎてどうにも手がつけられない。
2.口中の雌黄。
(こうちゅうのしおう)
一度口にしたことば、発表した文章の表現などに誤りや不適切なところがあれば、すぐに訂正することのたとえ。転じて、口からでまかせを言って、真相をおおい隠すこと。
3.赤貧洗うが如し。
(せきひんあらうがごとし)
非常に貧しく、洗い流したように何もないさま。
4.溜飲が下がる。
(りゅういんがさがる)
不平不満などが解消され、むかむかしていた心持ちがすっとする様子を表す表現。
5.桃李言わざれども下自ら蹊を成す。
(とうりものいわざれどもしたおのずからけいをなす)
桃やすももは何も言わないが、花や実を慕って人が多く集まるので、その下には自然に道ができる。 徳望のある人のもとへは人が自然に集まることのたとえ。
6.紺屋の白袴。
(こうやのしろばかま)
他人のことにばかり忙しく、自分自身のことに手をかける暇がないということ。
7.莫逆の友。
(ばくぎゃくのとも)
莫逆の友とは、互いの気持ちがぴったり合った、争うことがないような非常に親しい友人。
8.麦秀の嘆。
(ばくしゅうのたん)
亡国の嘆き。殷(いん)王朝滅亡後、殷の一族の箕子(きし)が破壊された宮殿跡に麦が生い茂っているのを見て、悲しんで作った詩による。
9.鐘も撞木の当たりがち。
(かねもしゅもくのあたりがち)
接し方しだいで反応も変わってくるということ。また、連れ添う相手しだいでよくも悪くもなるということ。
10.身体髪膚之を父母に受く。
(しんたいはっぷこれをふぼにうく)
人の身体はすべて父母から受けたものであるから、大切にしなければならないということ。後に「敢えて毀傷せざるは孝の始めなり」と続く。
11.一敗地に塗れる。
(いっぱいちにまみれる)
「一敗」は、一度の勝負で完全に敗北することを表し、「地に塗れる」は、戦死した者の内臓が地面に散らばって泥にまみれるという意味。
12.鵜の真似をする烏。
(うのまねをするからす)
自分に姿が似ている鵜のまねをして水に入った烏がおぼれる意から、自分の能力をよく考えず、みだりに人まねをすると、必ず失敗するということのたとえ。
(もうきのふぼく、うどんげのはな)
めったにないこと。
14.一片の氷心玉壺に在り。
(いっぺんのひょうしんぎょくこにあり)
一片の氷が、白玉の壺の中にあるように我が心は清く澄みきっているということ。
C故事・諺-1
1.敷居を跨げば七人の敵あり。
(しきいをまたげばしちにんのてきあり)
男がいったん家の敷居をまたぐと、外にはすでに多くの敵が待ち構えているという意味から。
「七人」は「多くの」という意味。
2.嬰児の貝を以て巨海を測る。
(えいじのかいをもってきょかいをはかる)
とうていできないこと。幼児が海で大海をくみだすことは、あまり隔たりすぎて比較にならないこと。
3.魯魚の誤り。
(ろぎょのあやまり)
字形がよく似た文字の書き誤りやすいこと。
4.菱蔓ほど子ができる。
(ひしづるほどこができる)
子がたくさんできてめでたいこと。「ひしづる」は、ひしの根から出る蔓(つる)。
5.深淵に臨んで薄水を踏むが如し。
(しんえんにのぞんではくひょうをふむがごとし)
深い淵をのぞきこむ時のように、また薄い氷の上を歩く時のように、こわごわと慎重に行動すること。転じて、危険に直面していることの形容。
6.画餅に帰す。
(がべいにきす)
画餅に帰すとは、計画などが実現できなくて、無駄に終わることのたとえ。
7.尾を塗中に曳く。
(おをとちゅうにひく)
亀は死んで占いに使われて尊ばれるよりは、生きている亀として泥の中で尾を引いているほうがよい。高位高官になって束縛されるよりは、貧しくても自由に暮らすほうがよい。
8.冠履を貴んで頭足を忘る。
(かんりをたっとびてとうそくをわする)
それぞれに頭と足があってこそ利用価値があるものだが、冠や履をありがたがってその根本の頭足を忘れている物事の本を軽んじ、末を重んじることをたとえていう。
9.鞍掛け馬の稽古。
(くらかけうまのけいこ)
なんの役にも立たない無駄な練習のたとえ。 「鞍掛け馬」は木馬のことで、木馬に乗って乗馬の練習をしても役に立たないことから。
10.一文銭で生爪剥がす。
(いちもんせんでなまづめはがす)
酷いけちんぼうのたとえ。 わずかな金の為に自分の身体を傷つける事もいとはないと言う意味から。
11.戎馬を殺して狐狸を求む。
(じゅうばをころしてこりをもとむ)
小さな利益のために大きな犠牲を払うことのたとえ。
12.秋の日は釣瓶落とし。
(あきのひはつるべおとし)
秋の日は急に暮れるという意。 「釣瓶落とし」は、井戸の中へ釣瓶が落ちてゆく速さ。 そんな速さで秋の日は暮れるということ。
13.片手で錐は揉めぬ。
(かたてできりはもめぬ)
錐をもむためには両手が必要であり片手では揉めない、ということから物事をするには力を合わせて協力をすることが大切であるということ。
14.纏まる家には金もたまる。
(まとまるいえにはかねもたまる)
団結する家族には金もたまりやすい。
15.錆に腐らせんより砥で減らせ。
(さびにくさらせんよりとでへらせ)
刀を錆びさせて使えなくするより、砥いで磨り減るまで使え。転じて、人生、命や能力を無駄にせず社会のために使いなさいという意。
16.八朔は婿の泣き節供。
(はっさくはむこのなきせっく)
八朔とは、陰暦8月朔日(ついたち)。 この日、農家で田実(たのみ)の節句を祝う。 これを過ぎると収穫の時期で忙しくなり、メーンの労働力である婿は昼寝もできなくなることをいう。
17.洞ヶ峠を決め込む。
(ほらがとうげをきめこむ)
自分にとって都合が良い方につこうとして、どちらつかずな態度で様子をみることのたとえ。
「豊臣秀吉」と「明智光秀」が争ったとき、「筒井順慶」が京都と大阪の境にある「洞が峠」で陣を張り、どちらか戦況が有利な方に味方しようとしたという故事から出た言葉。
18.ニ竪に冒される。
(にじゅにおかされる)
病気・病魔におかされる。
竪=竪子=子供。晋の景公が病気になったとき、病気の神が二人の童子の姿となって現れる夢を見たことから。
19.虚仮の後思案。
(こけのあとじあん)
愚かな者は、必要なときに知恵が出ず、事が過ぎてから考えが浮かぶものであるということ。
20.猩猩は血を惜しむ、犀は角を惜しむ、日本の武士は名を惜しむ。
(しょうじょうはちをおしむ、さいはつのをおしむ、にほんのぶしはなをおしむ)
猩猩は血を惜しむ、犀は角を惜しむの意味どんな者にも、大切にして守り通すべきものがあるたとえである。
B故事・諺②-3
1.麦藁蛸に祭鱧。
(むぎわらだこにまつりはも)
タコは、麦の収穫の6月頃、ハモは夏祭りの頃がうまいという意味で、どちらも旬の時期をいったもの。
2.辛夷の花の盛りが苗代の盛り。
(こぶしのはなのさかりがなわしろのさかり)
こぶしの花の開花する頃に、田植えを始めるのが最適だという言い伝え。
3.生は塵垢なり、死生は昼夜たり。
(せいはじんこうなり、しせいはちゅうやたり)
生は塵や垢と同じで、それらが集まって生命となり、また生命が塵や垢に戻っていく。よって生死は昼夜の変化と同じなのだ、という意。
4.座敷の塵取団扇ですます。
(ざしきのちりとりうちわですます)
団扇と内輪の掛けことばになっていて、内祝いの意味の洒落言葉。
5.傘と提灯は戻らぬつもりで貸せ。
(かさとちょうちんはもどらぬつもりでかせ)
傘と提灯は、必要な時以外は忘れがちな物だから、貸す時は返してもらえないつもりで貸せということ。
6.金蘭の契り。
(きんらんのちぎり)
きわめて親密なかかわり。
その交わりの堅さは金をも断つほどであり、その美しさは薫り高い蘭のようだという意から。
7.紅籏征戎吾が事に非ず。
(こうきせいじゅうわがことにあらず)
朝廷の旗(紅旗)をおしたてての朝敵征伐であろうと、自分にはまったく関係のないことであるという意。
8.修身斉家治国平天下。
(しゅうしんせいかちこくへいてんか)
天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、そして天下を平和にすべきである。
9.澹泊の士は必ず濃艶の者の疑うところとなる。
(たんぱくのしはかならずのうえんのもののうたがうところとなる)
さっぱりとした性格の人は、ねちねちした性格の人から敬遠されるということ。
10.鬼の女房に夜叉がなる。
(おにのにょうぼうにやしゃがなる)
鬼のような冷酷な夫には、それと釣り合う同じような女が女房になるということ。 似たもの夫婦のこと。
11.大海を耳搔きで測る。
(たいかいをみみかきではかる)
広大なものに、非常に小さい力量で対抗しようとするさま。 自分だけの狭い考えで、大きな問題をおしはかろうとすること。 浅薄な知識や料簡(りょうけん)しかないのに、大きな問題を論じたり、判断を下そうとすることのたとえ。
12.昔は槍が迎えに来た。
(むかしはやりがむかえにきた)
かつては槍長刀の共揃いがいたと言っていることになるので、かつてはいっぱしの武家であったと言っていることになります。部下である槍持ちが迎えに来るような家、立場にあったということ。
13.絞兎死して走狗烹らる。
(こうとししてそうくにらる)
うさぎが死ぬと、猟犬も不要になり煮て食われる。 敵国が滅びたあとは、軍事に尽くした功臣も不要とされて殺されることのたとえ。
14.鳥窮すれば則ち啄む。
(ちょうきゅうすればすなわちついばむ)
追い詰められると何をするかわからないということ。 鳥でも窮地に陥ると、くちばしでつつくという意味から。
B故事・諺②-2
1.馬革に屍をつつむ。
(ばかくにしかばねをつつむ)
戦死した者を馬の皮に包んで送り返す。 転じて、戦場で死ぬこと。 また、従軍した以上は生還を期さないという勇士の覚悟をいう。
2.叩くに小を以てすれば則ち小鳴す。
(たたくにしょうをもってすればすなわちしょうめいす)
小さく叩けば、それに見合った小さな音でしか鳴らない。 つまり、大きな事を成し遂げようと思ったら、それに見合うだけの多大な努力をしなければならないという意。
3.眼光紙背に徹す。
(がんこうしはいにてっす)
あたかも眼光が書物の紙の裏側まで見通すかのごとく、書かれた言葉の真意を深く理解するような深い読解力があること。
4.湯の辞儀は水になる。
(ゆのじぎはみずになる)
風呂に入るときに遠慮して譲り合っていると、湯が冷めてしまう。 遠慮も、時と場合とによることのたとえ。
5.漆喰の上塗りに借金の目塗り。
(しっくいのうわぬりにしゃっきんのめぬり)
しっくいの上に塗ってもはげる。 借金もその場限りのしのぎを付けてみても、結局ぼろを出す。
6.匕首に鍔を打ったよう。
(あいくちにつばをうったよう)
不釣り合いなこと。
「匕首」とは鍔のない小刀のことで、「鍔」は刀剣の柄と刀身との境に挟み柄を握る手を防御するもの。
短い小刀に鍔を付けても不釣合いなことから。
7.虎豹の駒は食牛の気あり。
(こひょうのくはしょくぎゅうのきあり)
虎や豹の子はまだ幼いうちから牛を食うほど意気さかんであるの意から、 大人物は幼少のときから常人とは違ったところがあることのたとえ。
8.至貴は爵を待たず。
(しきはしゃくをまたず)
真の貴さは爵位などによるものではない。この上なく貴い地位の人には爵位などは必要ないということ。
9.人を呪わば穴二つ。
(ひとをのろわばあなふたつ)
他人に害を与えれば、必ず自分にかえってくるものである。 他人を呪い殺せば、自分も相手の恨みの報いを受けて呪い殺され、相手と自分の分で墓穴が二つ必要になることから。
10.愁眉を開く。
(しゅうびをひらく)
ひそめていた眉根をもとにもどす意から、悲しみや心配がなくなって、ほっと安心した顔つきになる。悲しみや心配がなくなる。安心する。
11.虎の能く狗を服する所以のものは爪牙なり。
(とらのよくいぬをふくするゆえんのものはそうがなり)
虎が犬を服従させられるのは、強力なツメとキバがあるからである。 転じて、君主が臣下を従えられるのは君主に徳と法があるからであるということ。
12.駿馬痴漢を乗せて走る。
(しゅんめちかんをのせてはしる)
せっかくの名馬が、つまらぬ男を乗せて走る。美人が下らぬ男の言いなりになっていることなどに使われる。とかくこの世はうまくいかないたとえ。
13.青麦に小熟れ稲。
(あおむぎにこうれいね)
麦はまだ少し青いときに、稲は十分成熟した時に、刈り入れるのがよいという意。
14.盤根錯節に遇いて利器を知る。
(ばんこんさくせつにあいてりきをしる)
「盤根錯節」は絡まり合った根っこや入り組んだ木の節。 切ることが困難な木を切るときに、はじめて使用する道具の真価を判断することができる。人間も困難な事態を迎えて、はじめて実力を知ることができることをいう。
B故事・諺②-1
1.欲の熊鷹、股裂くる。
(よくのくまたか、またさくる)
あまり欲張ると、災いを招くというたとえ。二頭の猪をつかんだ熊鷹が、左右に逃げようとした猪を放さなかったために、熊鷹の股が裂けてしまったという話から。
2.田も遣ろう、畦も遣ろう。
(たもやろう、あぜもやろう)
何もかも与える。 相手かわいさに、分別もなく何もかも与えることのたとえにいう。
3.文章は経国の大業、不朽の盛事。
(ぶんしょうはけいこくのたいぎょう、ふきゅうのせいじ)
文章は、国を治めるための重大な事業であり、永久に朽ちることのない盛大な仕事である。
4.繫がぬ舟の浮きたる例なし。
(つながるふねのうきたるためしなし)
男はつなぎとめておかなければ、ふらふらと風任せだというたとえ。
5.鶏群の一鶴。
(けいぐんのいっかく)
多くの凡人の中に、一人だけ抜きん出てすぐれた人がまじっていることのたとえ。
6.孤掌鳴らし難し。
(こしょうならしがたし)
片方の手のひらだけでは、手を打ち鳴らせないところから、人間は一人だけでは生きられないこと、事をなしとげられないことのたとえ。
7.狐狸の精、尾を露す。
(こりのせい、おをあらわす)
化けた狐や狸の尻尾が見えてしまい、正体がばれること。 転じて、隠していたことが分かること。
8.胡蝶の夢。
(こちょうのゆめ)
夢か現実かはっきりわからないさま。また、人の世がはかないこと、人生がはかないことのたとえ。
9.天地は万物の逆旅、光陰は百代の加客。
(てんちはばんぶつのげきりょ、こういんはひゃくだいのかかく)
この世のすべてのものは、はかなく変わりやすいものだということ。「逆旅」は宿屋の意。天地を万物が訪れては立ち去っていく宿に、月日を永遠に歩み続ける旅人にたとえる。
10.口吻花を生ず。
(こうふんはなをしょうず)
優れたことを言う。 また、漢詩や和歌などを口に出して詠むこと。
11.立錐の余地がない。
(りっすいのよちがない)
木に穴をあける道具の錐(きり)の細い先すら立つほどのごくわずかな余地すらないという狭い土地のたとえから、転じて人や物がぎっしりと詰まって隙間のない状態を表すようになった。
12.巧詐は拙誠に如かず。
(こうさはせっせいにしかず)
巧みにいつわりごまかすのは、つたなくても誠意があるのには及ばない。
13.土用の丑に鰻。
(どようのうしにうなぎ)
土用の丑の日は季節の変わり目にあたる為に体調を崩しやすいので、鰻を食べて栄養をつけるということ。 鰻にはビタミンAやビタミンB群など、疲労回復や食欲増進に効果的な成分が多く含まれている。
14.魚の釜中に遊ぶが如し。
(うおのふちゅうにあそぶがごとし)
危険が迫っていることも知らずにのんきにしていることのたとえ。やがて煮られることも知らずに魚が釜の中を泳ぎまわっていることから。
15.味噌漉しで水を掬う。
(みそこしでみずをすくう)
苦労しても効果のないことのたとえ。籠で水を汲んでも、編み目から水が漏れて溜まらないことから。
16.采薪の憂い有りて朝に造る能わず。
(さいしんのうれいありてちょうにつくるあたわず)
「采薪の憂い」は、病気で薪をとりに行けないことから、自分の病気をへりくだっていう語。病気があり、朝廷に伺候することが出来なかったということ。
17.大山も蟻穴より崩る。
(たいざんもぎけつよりくずる)
大きな山も小さな蟻 (あり) の穴からしだいに崩れる。ちょっとした油断がもとになって大きな災難を招くことのたとえ。
18.旅の犬が尾を窄める。
(たびのいぬがおをすぼめる)
自分が威張っていられる家の中などでは威勢がいいが、外へ出ると意気地がなくなることのたとえ。犬が自分のなわばりから出ると、威勢がなくなり尾を垂れることから。
19.歳寒くして松柏の凋むに後るるを知る。
(としさむくしてしょうはくのしぼむにおくるるをしる)
寒い冬にこそ、他の植物がしおれても、松や柏(このてがしわ)は緑を保っていることがわかる。 人の真価は艱難(かんなん)にあって初めて知られるたとえ。
20.負け相撲の痩せ四股。
(まけずもうのやせしこ)
相撲に負けた後で、四股を踏んでも力強さを感じない。という意味から、負けてから強がっても、少しも威力を感じない。
B故事・諺①-3
1.肝胆相照らす。
(かんたんあいてらす)
お互いに心の奥底まで打ち明けあって、親しく交際すること。「肝胆」は、肝臓と胆嚢のこと。転じて、心の奥底の意。
2.帰心矢の如し。
(きしんやのごとし)
自分の家や故郷に帰りたいと思う気持ちが非常に強いこと。「帰心」は、故郷や我が家に帰りたいと願う心の意。
3.得手に帆を揚げる。
(えてにほをあげる)
自分の得意とする分野で力を発揮する好機をつかみ、ここぞとばかりに張り切ること。
4.断じて行えば鬼神も之を避く。
(だんじておこなえばきしんもこれをさく)
断固とした態度で行えば、鬼神でさえその勢いに気 (け) おされて避けて行く。決心して断行すれば、どんな困難なことも必ず成功することのたとえ。
5.大行は細謹を顧みず、大礼は小譲を辞せず。
(たいこうはさいきんをかえりみず、たいれいはしょうじょうをじせず)
大事を成し遂げようとする者は、小さなことにこだわったり、つまらない失敗をきにかけたりしないで、目標に向かって積極的に行うべきであるということ。
6.鞠と手と歌は公家の業。
(まりとてとうたはこうけのぎょう)
鞠は蹴鞠、手は書道、歌は和歌のこと。 公家のたしなみ。
7.鸚鵡能く言えども飛鳥を離れず。
(おうむよくいえどもひちょうをはなれず)
鸚鵡は人間の言葉を真似るのが上手であるが、所詮は鳥でしかない。口先ばかりが達者で、実際の行動が伴わないことのたとえ。
8.鷹匠の子は鳩を馴らす。
(たかじょうのこははとをならす)
子供は親の仕事を見よう見真似で自然に覚えていくというたとえ。鷹匠の子は、親が鷹を飼育するのを見て、まずは鳩から自分の手で飼いならすということから。「鷹匠」は将軍や大名に仕えて鷹を飼育し、鷹狩りに従った者。
9.井蛙は以て海を語るべからず。
(せいあをもってうみをかたるべからず)
井戸の中に住んでいる蛙に、海の話をしても、理解することができないから無駄であるということ。
10.矯めるなら若木のうち。
(ためるならわかぎのうち)
樹木の枝などの形を整えるなら柔らかい若木のうちにせよということ。 人間の悪い癖や欠点なども若いうちになおすのがよいというたとえ。 「矯める」は曲げたり伸ばしたりして形を整えること。
11.遠慮なければ近憂あり。
(えんりょなければきんゆうあり)
遠い将来のことを考えずにいると、必ず目前に心配事が起こる。
12.金槌の川流れ。
(かなづちのかわながれ)
金槌は頭の部分を下にして川を流れていくことから、人に頭のあがらないことのたとえ。また、出世の見込みのないこと。
13.薬の灸は身に熱く、毒な酒は甘い。
(くすりのやいとはみにあつく、どくなさけはあまい)
体に良い灸は熱いが毒になる酒はおいしいように、身のためになる忠告や諌言(かんげん)は素直に聞き入れがたいが誘惑には乗りやすいものであるということ。
14.窪き所に水溜まる。
(くぼきところにみずたまる)
くぼんだ所に水が自然に溜まるように、条件の備わったところは自然によい成り行きになることのたとえ。